16章 2次ドミナント
2次ドミナント機能の重要性と定義
どの音階においても、調性を弱めることなく各音度のドミナント和声(2次ドミナント)を先行させられる。
借用和音......各音度に先行する一時的なドミナント。
2次トニック......2次ドミナントをドミナントとする和音。
トニック化......2次ドミナントなどによって、その音階の主音以外を一時的に主音とすること。
2次ドミナントは、むしろ音階の調性を強める
その音階の主音を支える調的音度を、さらにドミナントとして支えるため。
たんに機能的な意味を持つだけでなく、調の中に新しい音を論理的に組み込み、音楽の表現を広げることができる。
解決
解決の原則は、主和音Ⅰから属和音Ⅴへの解決と同じである。
2次ドミナントの処理において、臨時記号で半音上に高められた音は上に解決し、半音下に低められた音は下に解決する。
2次ドミナントの使用
最も自然な方法は、2次ドミナントの前に、2次トニックの調の固有3和音をおくこと。
ある和音に対して調的な解釈が複数できる状態は、和声進行の論理的な響きを保証する。
対斜
対斜......2つの異なる声部をまたいで、半音階的な旋律進行が生まれること。
ⅤのⅤ(Ⅱ7)を解決する際、半音階的な進行を1つの声部内に保つと、正規の解決ができなくなる。
ⅡのⅤ(Ⅵ7)
短旋法のⅡは減3和音なので主和音となりえず、ⅡのⅤは長旋法でのみ用いられる。
ⅢのⅤ(Ⅶ7)
長・短旋法の2種類があるため、2次ドミナントも長・短旋法で使い分けられる。
短旋法の場合、2次ドミナントの進行は平行長調のⅤ-Ⅰのように聴こえる。
ⅣのⅤ(Ⅰ7)
とても慣用的で、サブドミナントを強調する働きを持つ。
ⅤのⅤ(Ⅱ7)
属調へ転調しない場合、主に半終止において使用される。
ⅥのⅤ(Ⅲ7)
Ⅲと同様に根音が長・短旋法で変位するため、2次ドミナントも2種類存在する。
ⅦのⅤ
第7音度が導音の場合それは一時的にも主音となりえず、そのドミナントも用いられない。
下行形旋律的短音階の第7音度には、そのドミナント和声が使える。(導音ではないため)